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配信日時:2019年8月19日 17時00分

PS4 PC Switch

命の価値観を様々な角度から抉る怪作ー「鬼ノ哭ク邦」発売直前インプレッション

スクウェア・エニックスが2019年8月22日に発売するPS4/Nintendo Switch/PC(Steam)用ソフト「鬼ノ哭ク邦」。ここでは本作の魅力を世界観から探っていきます。

「鬼ノ哭ク邦」は、90年代のJRPGを彷彿とさせるゲーム開発を行ってきたTokyo RPG Factoryの新作アクションRPG。

同スタジオは、これまで“Project SETSUNA”として、「いけにえと雪のセツナ」や「LOST SPHEAR」を発表してきましたが、このプロジェクトの第3弾にあたるのが本作「鬼ノ哭ク邦」です。

これら3作品はそれぞれが独立した作品なのですが、“Project SETSUNA”では一貫して“命”にまつわる物語が描かれてきました。本作でもその文脈は健在で、ある意味より直接的にプレイヤーへ命の価値を問いかけてくる作品となっています。

本稿では、そんな「鬼ノ哭ク邦」の世界設定から、タイトルの魅力を探っていきます。なお、ゲームシステムに関するレビューは体験版のインプレッション記事を参照してもらえると幸いです。

■「鬼ノ哭ク邦」は命の尺度をプレイヤーに問いかける

本作をプレイする上で、まず押さえておきたいのが独特の世界観。「鬼ノ哭ク邦」では、輪廻転生によって命が繁栄した世界が描かれていきます。つまり“死”は来世を迎えるための希望としての側面が強く、それ故に死を悲しむことは輪廻転生を妨げる禁忌とされているのです。

我々から見るとかなり歪んだ価値観に感じてしまうかもしれませんが、一度輪廻転生の輪から外れてしまうと二度と人として生まれてくることができません。だからこそ、その防衛策としてこのような考えが生まれたのでしょう。

輪廻転生は、そのまま出生率にも繋がります。邦が繁栄するには、死を受け入れる必要があるのです。

そんな世界だからか、彷徨える死者の魂と生者をつなぐ役割として本作の世界には「逝ク人守リ(いくともり)」が登場します。「逝ク人守リ」は、死者の魂と会話をすることができ、その未練を断ち切ることで来世へと魂を送ることを生業としている者たちのことです。

そして、本作の主人公「カガチ」も「逝ク人守リ」として様々な死者、そして生者と関わっていくことになります。

本作の世界観がよくわかるエピソードとして、物語序盤にカガチは死んでしまった少年に出会うことになります。少年は父親と母親にもう一度会いたいという未練を抱えており、いまだ来世へ逝けずにいるのです。カガチはこの未練を晴らすため、少年を両親のもとへ連れて行くことになります。

再会を果たし、これにて一件落着かと思いきや、両親に会ってしまったことで少年に後悔の気持ちが蘇ってしまいます。年端も行かぬ少年のことですから、しょうがないことではあるのですが、実際問題としてこのままでは少年の魂を来世に渡すことができなくなってしまいます。

そこで両親がとった選択は自分たちも少年と一緒に“逝く”ことでした。カガチは「逝ク人守リ」として、両親をその手にかけます。「悲しんではいけない」と、まるで自らに言い聞かせるようにして……。

このように輪廻転生が前提としてある世界の物語なので、本作では“死”がある種の解決策として提示されています。私達の価値観とはそぐわない点ではありますが、老若男女、すべての人がこの共通認識を持っている世界が舞台となるのです。

ここで興味深いのが、全ての人たちが同じ温度で死を受け入れていないこと。来世へ笑って送り出すことができる人がいる一方で、理屈としては理解してはいるものの感情が追いついてこないという人もいるのです。

この世界では死後も輪廻転生が保証されているかのように謳われていますが、転生後に前世で大事だった人に巡り会える保証など無く、転生後の自我がどうなるのかもわかりません。その弱みに付け込んだ商売をする人や宗教が街では流行っていたりと、別の世界を覗いているかのような不思議な体験をすることができました。

また、カガチは「逝ク人守リ」として活動していく中で様々な人々や事件に遭遇します。輪廻転生の不確かさに怯える人々に偽りの教えを説く教祖、亡き妻を蘇らせるため禁忌に触れる男、はたまた同じ「逝ク人守リ」ではあるものの親しい人を亡くした人まで様々です。

彼ら彼女らは訳あって、この世界の理から背く行為に手を染めるのですが、それは一つの命が持つ尊さや歪んだこの世界の倫理観故のものです。それは時として私達の価値観に近く、犯罪者と呼ばれる人たちの方にこそ感情移入してしまうこともままありました。

ちなみにこの世界では、どんな犯罪者も死刑になることはありません。それは、この世界の“死”は希望でなくてはならないから。

このように本作は、手を変え品を変え、様々な角度から私達の価値観を揺さぶってきます。初めこそ「逝ク人守リ」の教えが正しいものとして物語を進めていきますが、出会った人々や事件、その真相に触れていくうちにプレイヤーは命の意味を自らで考えてしまうのではないでしょうか。

本作のストーリーは決して万人にオススメできるものでは無いかもしれません。事実、筆者もこのゲームをプレイしていて精神的にかなりしんどかったです。しかし、人によっては間違いなく心に刺さる一作になりうる可能性を秘めているのも事実です。

本作が気になっている人は是非一度、まずは配信されている体験版からで構いませんので遊んでみてはいかがでしょうか? できれば時間をかけてじっくりと、自分なりの考えを探しながらプレイするのをオススメします。

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