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配信日時:2018年2月13日 00時00分

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【おすすめDLゲーム】とにかく難しいアクションゲーム『Getting Over It with Bennett Foddy』の魅力を分析

 ダウンロード用ゲームから佳作・良作を紹介する“おすすめDLゲーム”連載。今回はSteamとiOS向けに配信中のアクションゲーム『Getting Over It with Bennett Foddy』を紹介する。

『Getting Over It with Bennett Foddy』

「特定の人に向けて、
誕生した、ゲーム。

特定の人を、傷つけるために。」

 「……いきなり何?」と言われそうだが、実はこれ、『Getting Over It with Bennett Foddy』のSteam日本語ページに掲げられた文章だ。下半身が釜(というか壺にしか見えないが釜とのこと)にスッポリ入った男が、ハンマーだけで山を登る。見た目のインパクトは十分すぎるくらいで、妙に小奇麗なグラフィックがシュールさを際立て、さらには製品ページとゲーム本編の日本語訳が怪しさを倍増させる。

『Getting Over It with Bennett Foddy』
▲怪しさ全開。後述するが見た目もさることながらゲーム本編もインパクト十分。

 作者によれば、本作は「Jazzuoが2002年に生み出したB級ゲーム『Sexy Hiking』への敬愛の体現でもある。マウスでハンマーを動かしひたすら進む。ただ、それだけ。練習を積むことで、ジャンプ、スイング、登山、滑空が可能に。山頂を目指す挑戦者を待ち受けるのは、偉大なる神秘と素晴らしきご褒美(Steam製品ページより引用)」とのこと。ならば“特定の人”とか“傷つける”とはいったい!? という話ではあるのだが……。

 不勉強な筆者は原典『Sexy Hiking』を知らずいろいろと調べたところ、敬愛のニュアンスこそ測りかねるが、なるほどこれは……という感じ。頭に手足が生えただけのキャラクターがハンマーで障害物を超えていく原理原則はほぼそのまま。

 全編“B級”あるいは“C級”テイストに満ちあふれており、Windows付属のペイントツールで描いたかのような粗雑なグラフィックと判定処理が目に付く一方、“ひっかけてのぼる”という一点突破のシンプルかつキャッチーなフックが、当時遊んだ(恐らくは一部の)人たちの感性を刺激したのもよくわかる。ちなみに本作は無料配布されているようで、サイズも約2MBと小さく気になる人はぜひ(自己責任のもと)チェックしていただきたい。

『Sexy Hiking』 『Sexy Hiking』
▲これがもとになった『Sexy Hiking』。見た目も判定処理も粗雑の一言だが、芯をとらえた“フック”だけで成立させた力業みたいなゲームだ。
もどかしい地獄のマウス操作

 さて……そんな敬愛から生まれた本作。ルールや概要は冒頭で紹介したとおり、釜(というかもう壺でよくない?)にスッポリはまった男がハンマーだけで頂上を目指しひたすら登っていく。

 操作はマウスのみ使用。主にノートPCなどに搭載されるトラック(タッチ)パッドモードも用意されており、ゲーム開始時にどちらかを選択するが、これは後々設定画面を呼び出して好きな時に変更できる。スタート画面は“最初からやり直す”、“設定”、“クレジット”、“やめる”とシンプル。ゲームはいつでも中断でき、その場所から再開できる。

 ゲームを始めると釜から上半身裸の男がニョッキリでてきて両手でハンマーを握る。マウスの動きはハンマーに連動しており、まずはポインターを目安に動かしてみる。最初は平面なのでハンマーで地面を“ひっかけて漕ぐ”要領で進んでいく。

『Getting Over It with Bennett Foddy』
▲最初は平地。シュールな絵面以外はさして難しそうでもないが……。

 この時に重要なのは、設定画面の“マウス感度”。ハンマーの力加減はマウスを動かす速さと量に比例しており、感度が低いとより大きくマウスを動かす必要があり、感度が高すぎるとわずかな移動量でもハンマーが激しく反応してしまう。

 マウスの移動量、速さ、方向をいかに制御するかが本作のカギで、これ以上ないくらい利き腕を酷使する。ファミコン時代の“ゲームは1日1時間!”ではないが、よほど屈強な人でもないと数時間で利き腕が悲鳴をあげる。個人差も大きい部分につき、まずは自分に最適なマウス感度を突き詰めることをオススメする。

『Getting Over It with Bennett Foddy』
▲マウス感度はとても重要。自分に合う設定を探そう。

 最初のハードルは、原典『Sexy Hiking』に対するリスペクトともいうべき1本の木。ちなみに冗談ではなく、この時点で人によっては「こんなもんできるか!」と怒ってゲームを辞めてしまうかもしれない。

“ハンマーをひっかけて勢いをつけて上る”

 文字にすればたったこれだけのことが、とにもかくにも難しい。横に友人や知人がいたら体感の難易度とは正反対の絵面に「何、こんなのもできないの? ちょっとマウスを貸して!」とほぼ間違いなく言ってくるだろう。その友人知人が経験者なら話は別だが、初体験なら恐らく確実に「えっ?」となるかと。

 ただし、本作のままならない操作性は原典の忠実再現というか、明確な意図のもと作られており、決して操作性が悪いわけではない。マウスが不調もしくは壊れているのでもなければ、ハンマーはマウスの入力どおりに動く。

『Getting Over It with Bennett Foddy』

 ただ、人間ゆえにつねに精密機械のごとくマウスを動かせるはずもなく、アナログ的な加減の違いが即座に反映する。すべてはゲーム内の物理法則に基づいており、決して逸脱することはない。文字や映像では決して伝わらない“もどかしさ”が常につきまとい、これが前置きした「こんなもんできるか!」につながってくる。例えるなら、小さな針の穴に糸を通す、トランプタワーを積み上げていくような感覚といえば伝わりやすいだろうか。

 ハンマー操作は、ゲームを進めるにつれて“正確性”はもちろん“スピード”も必要とされてくる。レベルデザインもどんどん凶悪になり、途中“すごろく”のスタート地点に戻されるかのような絶望的構造が何度も続き、ユーザーの心を躊躇なく折りにくる。Steamのユーザーレビューはほぼ好評だが、「出オチのネタゲー」や「〇×ゲー」、「〇〇〇れ」などの直球的な批判も散見される。

『Getting Over It with Bennett Foddy』
▲序盤から微塵も容赦がない。地道な研鑽を積むべし。
インスタ映えならぬ“配信映え”は極上。そして難易度も極上

 本作をプレイしている人の中には、いいイメージを抱いていない人もわずかながらいるようだ。冒頭のメッセージに加えて、プレイ中に流れる音声と字幕、さらには失敗を揶揄するように煽り気味に挿入される楽曲も、そうした印象を強くさせる要因かもしれない。

『Getting Over It with Bennett Foddy』

 実際のところは作者におうかがいするしかないが……冒頭メッセージどおりの意図があろうがなかろうが、筆者的に本作は至極“マジメ”に作られたゲームのように感じられた。

 「えっ、こんなのクソムズいだけで理不尽の塊じゃん!」と言われそうだが、本作の難しさは明確なルールと物理法則に基づいており、それに則ってプレイする限りゲームはきちんと進行し、高難易度をうたう作品でたまに見受けられる“自己都合によるルールの捻じ曲げ=インチキ”もない。

 確かに難易度はすさまじく高いが、その源(みなもと)たる独特の操作性は原典よりユーザーフレンドリーだし、少なくともインチキやそれに由来する不快さは感じられない。賽の河原よろしく苦労に苦労を重ねた“進捗”がほんのわずかな操作ミスで台無しになるエグいレベルデザインも、クリアのポイントそれ自体は明確だ。

『Getting Over It with Bennett Foddy』

 万人が楽しめるスタイルではないが、ひっかけるための位置、幅、広さ、長さなど、一見アバウトだがクリアを前提に考え抜かれたものであることが伝わってくる。もし悪意しかないなら、そうしたポイントは非常にわかりづらいか、もしくはとても曖昧なものにされるだろう。

 よくゲームなどにおいて“不自由を楽しむ”といった表現が使われるが、重要なのは“整備されたルール”だと思う。厳格すぎると窮屈で、さりとてガバガバでは刺激がないし、そもそも何をさせたいのかという話になる。その点で本作は操作がアナログ的ということもあり、実はアクションのマージンが結構ある。あまりにも可能性は薄いが、精神的に追い詰められた時にやりがちな勢いに任せたアタックも決して0%ではないあたりも個人的に好み。とにかく難しく、失敗の連続と腕の疲労でプレイ中の様子はとても人様にお見せできない有様だが、最終的に納得はしている。

『Getting Over It with Bennett Foddy』

 あれこれ述べてきたが、最後に指摘したいのは本作の“現代性”だ。上半身裸の男がつ……(もう壺と表現してもいいんだろうけど)釜に入ったままハンマーを振り回してひたすら頂上を目指す。奇怪かつシュール以外の何物でもなく、操作性以上に“見た目のキャッチーさ”が際立っている。実際、2017年12月Steamに登場した瞬間、本作は世界中の動画配信者にキャッチアップされ、それぞれが見た目の怪異さ、難易度の高さ、情け無用のステージ構成に悲鳴を上げる姿を競い合っていた。

 恐らく、今後はSteamなど各プラットフォームでリリースされるゲームには“インスタ映え”ならぬ“配信映え”を意識したものが増えていく可能性はある。意図としてあったかどうかはわからないが、本作は前述のとおり実に“配信映え”する。一見カンタンなことをやっているように見えて実際は激ムズで、その様子がとてもコミカル。いい意味でギャップともどかしさの塊だ。

『Getting Over It with Bennett Foddy』
▲今後は配信映えも重要なポイントになるかも?

 ありえない造形のキャラクターが動き回り、もどかしい失敗の連続。これを見た第三者が興味を抱かないわけがない。狙いどおりなら“してやったり”だし、そうでなくても現代的ニーズをとらえたセンスの持ち主と素直に賞賛できる。アクションに自信がある人はもちろん、興味がある人はぜひチャレンジしていただきたい。

(C) 2017 Bennett Foddy

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